
近年は国民の価値観も多様化しているといわれていますが、葬送のしかたなどの伝統的な分野であってもその傾向は否定できない事実といえます。
以前であれば家族が亡くなった場合には、故郷にある先祖代々の墓に埋葬するのが一般的であり、そのことに疑いをさしはさむ人はほとんどいなかったはずです。
しかし就職や転勤で生活圏が広がるとともに、逆に故郷とのつながりが希薄になるケースが増えてきました。
実際のところ故郷から離れた場所にマイホームを建てて住んでいる場合には、わざわざ故郷に里帰りをして毎年の墓参を繰り返すのもかなりの負担になりますし、その状態では十分な維持管理ができないおそれがあります。
このような背景もあって、最近は先祖代々のお墓はいったん手仕舞いして、できるだけ住んでいる場所の近くに別のお墓を求め、お墓そのものも子孫の負担にならないようにシンプルなものにとどめる傾向があらわれてきています。
そのような傾向の究極的な姿ともいえるのが樹木葬です。
宮城県仙台市近郊にある清浄山禅興寺には樹木葬を営めるスペースが確保されています。
この樹木葬は石で墓標をつくるかわりに樹木を植えて、その下に遺骨を埋葬する方法ですが、先祖代々のお墓のように家を単位とするものではなく、さまざまな個人を一定の区画に合葬するスタイルとなります。
したがって家ごとに自己責任でお墓を維持管理する従来のような負担からは解放されますし、費用を安くする効果もあります。